日本の美術館の所蔵品から、今日の一枚

名古屋でフリーダ・カーロの珠玉の一品を見る。/『死の仮面を被った少女』

名古屋市美術館に所蔵されているフリーダ・カーロ( Frida Kahlo )の『死の仮面を被った少女』。
フリーダ・カーロ『死の仮面を被った少女』(1938) 名古屋市美術館

名古屋に訪れる機会があったら是非見てみたいのが、名古屋市美術館所蔵の『死の仮面を被った少女』。日本で大きな回顧展も開かれた近代メキシコアートを代表する女流画家フリーダ・カーロによる名品の一枚だ。

絵を見てみると、小麦色の肌をした小さな女の子が骸骨の仮面をかぶり、こちらを向いて立っている。裸足のままで両手に小さな花を持ち、首元にレースが付いたピンクのワンピースを着ている。骸骨のお面を付けたその女の子の佇まいは、どこかあどけなく愛らしい。この絵には「彼女は一人で遊ぶ(She plays alone)」という、少し寂しげな副題が付けられている。

メキシコ出身のフリーダ・カーロは、20世紀前半に最も活躍した女流画家の一人に数えられる。同美術館の作品はピンクや水色などの可愛らしい色合いの葉書きサイズの小品(14.9×11.0 cm)だが、国内外の展覧会や書物などで紹介される有名なもので、カーロの芸術的な世界が凝縮されている。

名古屋市美術館に所蔵されているフリーダ・カーロ( Frida Kahlo )の『死の仮面を被った少女』。
フリーダ・カーロ『死の仮面を被った少女』の一部。

カーロの創作活動は、彼女の私生活やメキシコの土着の文化と深く結びついていることで知られる。この作品では流産を経験したカーロが、生まれくることがなかった自分自身の子どもの絵を描いたと言われる。絵の中で女の子が着けている骸骨のお面や手に持つ黄色い花は、有名なメキシコ土着の「死者の祭り」で実際に使われるもの。カーロは女の子に「死者の祭り」で使う骸骨の仮面をかぶせて黄色い花を握らせることで、その子の死を暗示させている。

同美術館では他の展覧会などに貸出していなければ、カーロの作品を展示している。立ち寄る機会があれば、この小さな作品からフリーダ・カーロの世界を覗いてみたい。

フリーダ・カーロ( Frida Kahlo )の『死の仮面を被った少女』を所蔵している名古屋市美術館。
名古屋市美術館

名古屋市美術館
名古屋市中区栄二丁目17番25号(芸術と科学の杜・白川公園内)
http://www.art-museum.city.nagoya.jp/


フリーダ・カーロ(1907-1954)

名古屋市美術館に所蔵されている『死の仮面を被った少女』を描いたフリーダ・カーロ( Frida Kahlo )の写真。

近代メキシコアートを代表する画家。画家自身の私的な生活やメキシコ土着の文化を題材に象徴的な絵を描いた。もともと身体が丈夫でなかった上に18歳の時の交通事故により、生涯、身体的な不調や苦痛に苦しむ。メキシコの壁画運動で知られるディエゴ・リベラはカーロの夫。200点余り残されている作品のうち自画像も多い。
読み物/Google Arts & Culture ストーリー人は見かけによらない

Top, Portrait of Diego Rivera and Malu Block and Frida Kahlo de Rivera, Carl Van Vechten. From bottom left, Frida Kahlo "Self-Portrait with Thorn Necklace and Hummingbird" (1940) owned Harry Ransom Center, Austin. Frida Kahlo "Frieda and Diego Rivera" (1931) owned San Francisco Museum of Modern Art. Frida Kahlo "Self-portrait in a velvet dress" (1926) owned Museo Dolores Olmedo.

✎著/ 種をまく https://www.tane-wo-maku.com

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